UNIJAPAN 公益財団法人 ユニジャパン



事業概要
トロント国際映画祭2009 レポート

カンヌ映画祭やベルリン映画祭などと比べても規模、話題性とも引けをとらないトロント映画祭が今年も9月10日から9月19日まで開催された。米アカデミー賞の有力作品の多くがトロント映画祭で初お披露目となることから、ハリウッドスターも多く来場し、華やかな雰囲気の中行われる。コンペティション部門はないが、他の映画祭での話題となった作品なども多く上映され、幅広いラインアップを観られるのが魅力となっている。また、公式出品作品に対しては自動的にマーケットスクリーニングを行い、また各作品にプレス担当者がつくなど、出品者に対してのケアが行き届いているのも大きな魅力となっている。

映画祭期間中に会場となる劇場の数はトロント市内のダウンタウンを中心に15ヶ所あり、
上映される作品もメジャー系ハリウッド映画から、実験映像部門まで幅広い。また街をあげて映画祭に取り組む姿勢も多く見かけられ、バスや地下鉄に乗っていても映画祭のポスター等を目にする機会も多い。

映画祭に登録したゲストには、映画祭期間中に地下鉄やバスが全て無料で使えるパスが配布される。特に会場数が多く地下鉄に乗らないと移動できない距離にあるので、参加者にとっては非常にありがたい。他の映画祭ではこういったサービスを提供しているところはなかなか無い。

  • AFINブース報告

ユニジャパンでは今年もトロント国際映画祭期間中に開催される「Press & Industry Office」内にKOFIC(韓国映画振興委員会)と共同でAFINデスクを出展した。「Press & Industry Office」は国単位でのみブースを出展することができ、今年はAFINの他、フランス(UNIFRANCE)、ベルギー、イタリア、スペイン、スカンジナビア、イスラエルの6団体が出展した。通常、映画祭のマーケットではセールス会社が中心となってブースを出すが、トロントでは各国と地域がトロント国際映画祭出品作品のみをプロモーションする場となっている。

afin.jpgAFINブースの様子

「Press & Industry Office」はSutton Place Hotelの1階の宴会場が会場となっているが、それとは別に同ホテルの上階にはセールス会社がホテルの部屋を借りて、セールス活動を行っている。ただし、非公式のためガイドブックやトロント映画祭のホームページ等には一切セールス会社の出展場所は掲載されないので、各会社があらかじめバイヤー等に出展場所を告知し運営している。またUNIFRANCEは「Press & Industry Office」内にブースを持つのとは別に上階に部屋を借り、自国のセールス会社にセールス活動の場所を提供していた。このシステムはトロント映画祭独自のものだが、映画祭側の意図としては、バイヤーの公式作品への注目度を奪わないことにある。詳しい数字は分からないが、他のマーケットと比べても公式作品のディールが決まったという話しを聞くことが多いので、映画祭側のこの姿勢は一定の成果は挙げているのかもしれない。

  • Asian Film Night

国際交流基金トロント文化センター、KOFICと共同で9月12日にレセプション「Asian Film Night」 を開催した。アジアからの参加者や海外の映画関係者の交流の場として毎年多くの映画関係者にお越し頂いている。会場は今年もトロント文化センターの施設の一部をお借りして行った。日本からは「カムイ外伝」の崔洋一監督、「ウルトラミラクルラブストーリー」の横浜聡子監督が、韓国からは「母なる証明」のポン・ジュノ監督、ベトナムから「Adrift」のBui Thac Chuyen監督がそれぞれ参加して下さった。特に崔監督とポン・ジュノ監督は以前から親交があったようで、再会に喜ぶ姿が印象的だった。世界中から映画関係者が集まる映画祭だが、一堂に会する機会はなかなか無い。こういったレセプションはネットワーキングのための重要な場となる。

asian.jpgAsian Film Nightの様子

Asian Film Nightの参加者は約280名だった。これは昨年より微減となったが、映画祭第2週目の火曜日にはすでに帰路についている参加者が多かったためと思われる。今年2月のベルリン映画祭でも感じたことだが、世界的な不況を受けて映画祭参加者の滞在日数が徐々に短くなってきている。週末にかけて映画祭に参加し、日曜日もしくは月曜日には帰ってしまう参加者が多い。来年もレセプションを行うとしたら、開催日の見直しが必要だと感じた。

  • 上映された日本作品&観客の反応

毎年、トロントでは日本映画が複数作品上映される。今年は日本からは下記の5作品が出品され、「しんぼる」の松本人志監督以外は全監督が来場した。また下記の作品以外に国籍はタイ映画となっているが日本人映像作家の西川智也監督の「Lumphini 2552」が出品された。

「空気人形」(是枝裕和監督)
「カムイ外伝」(崔洋一監督)
「ウルトラミラクルラブストーリー」(横浜聡子監督)
「ガマの油」(役所広司監督)
「しんぼる」(松本人志監督)

トロント映画祭では毎年日本映画が多く上映され、2003年には「座頭市」(北野武監督)が観客賞を受けるなど、日本映画も人気がある。今回も日本映画の上映では、どの回もほぼ満員となるなど、概ね好評を得た。ただし、映画祭期間中に日本映画を始めアジア映画が地元のマスコミに大きく取り上げられる機会は少ない。カンヌ映画祭やベルリン映画祭と比べても極端に少なく感じられる。これは地理的に近いためアメリカから大勢のスターが来場するため、どうしても日本映画が地味な存在になってしまうことと、コンペ部門がないためアジア映画が話題になりづらく、ニュース性が低いことが考えられる。

しかし一方で、日本映画が受け入れられる土壌が出来つつあると感じた。映画祭とは関係ない一般の劇場で映画祭期間中、3本の日本映画(「おくりびと」「崖の上のポニョ」「トウキョウソナタ」)が上映されていた。非英語映画(もっとも「崖の上のポニョ」は吹き替えだが・・・)が上映される劇場が少ない中、これは快挙といえるのでないか。日本のアニメーションブームや米アカデミー賞での「おくりびと」の外国語映画賞受賞などが追い風になっているのかもしれない。

  • 来年以降のトロント映画祭

現在、「Press & Industry Office」等の会場となっているSutton Place Hotelだが、来年から会場が変更になる。2010年からの新会場はHyatt Regencyで、新しく建築中のビル Bell Lightboxの真横に位置する。Bell Lightbox は2011年完成予定の映像総合施設で、再来年以降の映画祭のメイン会場になるだけでなく、1年を通じて様々な形で映像文化の振興に利用される。5階建てで15万平方フィートの大きさを誇り、劇場が5つ、ギャラリーや撮影スタジオのほか、学生が学べる学習設備も設営される。来年の映画祭の時期にはまだ未完成だが、施設の一部を利用してスクリーニングやパーティー会場として利用される予定。

hyatt.jpgHyatt Regency
bell.jpgBell Lightbox


(国際事業部・筆坂健太)



このページの先頭へ